企業会計原則の一般原則,継続性の原則を簡潔に説明します。

財務諸表を作成する上で、大切な、一般原則について簡潔に説明します。(一般原則、五)

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

企業会計原則の一般原則,継続性の原則には、前提があります。

継続性の原則には、前提があります。この前提がなかったとするならば、継続性の原則は存在しないのです。

前提とは、経理自由の原則です。この前提である経理自由の原則がない場合は、継続性の原則は存在しないのです。

継続性の原則は、上記の2つ(1つ目として、前提に経理自由の原則。2つ目として継続性の原則。)をセットで、覚えてください。

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続しなければならないという意味は、その会計事象について、2つ以上の原則及び手続があるためです。

もし、その処理の原則及び手続が、この世に、例えば、減価償却については定額法たった1つしか存在しなかったとするならば、そもそも経理自由の原則は存在しないのです。また、当たり前ですが継続性の原則も存在しないのです。

重要なことですので、繰り返し記載します。前提である経理自由の原則が存在するから、継続性の原則は存在するのです。

以下、前提である「経理自由の原則」と、「継続性の原則」と「継続性の変更」について記載します。

企業会計原則の一般原則,継続性の原則の前提。経理自由の原則

経理自由の原則とは、1つの会計事実について、2つ以上の会計処理の原則または手続の選択適用が認められている場合のことを言います。

この経理自由の原則が必要とされる理由は、「(諸般の事情により)企業会計原則の制定前に、経理自由の原則が存在していたこと。」です。

企業会計原則の一般原則,継続性の原則と真実性の原則。経理自由の原則を含めます。

経理自由の原則は、「1つの会計事実について、2つ以上の会計処理の原則または手続の選択適用が認められている場合のことを言います。」と規定されが、下記の黒沢清教授が述べたように、あくまでも、「真実性の原則」の枠内でという制限があります。

以下、田中弘教授の著書からの孫引きですが、記載します。様々な考え方を取り入れることによって会計を包括的に理解できます。

田中弘教授は、「(黒沢清教授)が、企業経理自由の原則のもとにある企業経理の実務が、企業エゴイズムから生ずる恣意性におちいることを制約しているものが、企業会計の一般原則であり、とくに真実性の原則である。………企業経理の自由は、いかにそれが企業経営上必要であることを認めなければならないとしても、真実性の侵害にまで逸脱することは許容されないのである。企業経理自由の原則(会計第97巻第1号 1970年1月黒澤清)」と述べています。(原点復帰の会計学 田中弘著p113 税務経理協会)

黒沢清教授は、「企業経理自由の原則のもとにある企業経理の実務が、企業エゴイズムから生ずる恣意性におちいることを制約している」ものとして、「真実性の原則」をあげています。

真実性の原則を採用して財務諸表を作成した結果として、「有用性」と「信頼性」が確保されます。

「真実性の原則」の相対的真実が、「有用性」と「信頼性」という言葉につながっています。

結論としては、「経理自由の原則」を採用した、財務諸表であっても、「継続性の原則」を採用し、かつ、「真実性の原則」の枠内であれば、「有用性」と「信頼性」が確保されます。

企業会計原則の一般原則,継続性の原則と真実性の原則。有用性と信頼性

「真実性の原則」の枠内であるならば、「継続性の原則」により、「有用性」と「信頼性」が確保されます。

この「有用性」と「信頼性」が確保されることになります。

この結果、経営者(財務諸表の作成者)の利益操作を排除し、財務諸表の期間比較性を確保されます。

つまり、毎期、異なった処理の原則及び手続を毎期継続して適用することは、経理自由の原則を言い訳(依拠)にして、毎期、儲け(利益)を算出するための手法が採用できなくなります。

また、収支差額と期間損益は一致するという考え方からもリンクしています。

要するに、初めの期間に益出し(儲け(利益))を算出しても、長い期間で考えると、最終的に、継続性の原則を維持することによって、答えは同じになります。

企業会計原則の一般原則,経理自由の原則の必要性。継続性の変更

1.継続性の前提(経理自由の原則)の必要性

一つの会計事実について一つの会計処理の原則又は手続だけを定め、これをすべての業種や業態の異なる全ての企業に強制することは、かえって、企業の実情を財務諸表に反映しなくなり、財務諸表の相対的真実性が保証されないことになるからです。

要するに、経理自由の原則の認められた範囲内で、ケースバイケースで、最も適切に企業の実情を財務諸表に反映する手法を選択することこそが、「相対的真実」を確保することになるという意味です。

2.継続性の変更

継続性の変更は、「正当な理由」がある場合に認められます。この「正当な理由」とは、会計処理を変更することによって、企業会計がより合理的なものになる場合を意味しています。

正当な理由とは、下記のような項目を言います。

1.会計基準等の改正に伴う会計方針の変更
2.上記1以外の正当な理由による会計方針の変更の場合

上記1は、会計基準というルール自体が変更になるので、いやおうなしに変更します。
2は、1以外で、下記のようなものがあります。

3.会計方針の変更が企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること
4.会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われるものであること

要するに3と4は、1.のような、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更ではないものの、会計方針を変更することによって、財務諸表を利用する利害関係者に対し、適正な情報等を伝えることができるような場合には、「正当な理由」により、会計方針を変更することになります。