損益計算書原則。収支額基準は測定基準です。簡潔に説明します。
下記の原則は、現金主義と発生主義と実現主義(認識)収支額基準(測定)です。ただし、今回は収支額基準に注目し記載します。
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
収支額基準、発生主義と実現主義について、原則を3つに分けて読みます。
上記の原則は、3つに分けて読みます。
最初の段落は、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し」までです。この段落は、費用及び収益の測定基準としての収支額基準について言及しています。
第2段落は「その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」までで、この段落は、費用及び収益の認識原則としての発生主義について言及しています。
最後の第3段落ですが「ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」の部分が、この段落は、費用及び収益の認識原則としての実現主義について言及しています。
第1段落は、「収支額基準」を採用しています。
第2段落は、「発生主義」を採用しています。第3段落は、「実現主義」を採用しています。
つまり、この原則は合計3つの項目について言及しています。
現金主義と発生主義と実現主義は「認識」です。収支額基準「測定」です。似ていますが異なります。
現金主義と発生主義と実現主義は、費用と収益の「認識」基準です。
収支額(収支)基準は、費用と収益の「測定」基準です。
簡単に言うと、費用と収益の「認識」とは「いつ」(時間軸)を損益計算書に計上するかがテーマです。
英語で言うと、現金主義と発生主義と実現主義は「when」をテーマにしています。
費用と収益の「測定」」とは、「いくら」(額・円)を損益計算書に計上するかがテーマです。
英語で言うと、収支額(収支)基準は、「how much」をテーマにしています。
似ているように感じますが、現金主義と発生主義と実現主義(認識)と、収支額基準(測定)は対象としているテーマが異なりますので、注意してください。
現金主義、発生主義、実現主義、収支額基準を簡潔に説明します。
我が国の費用は発生主義。収益は実現主義を使用して、測定基準は収支額基準を用いる旨、(損益計算書原則一A)に規定されています。
また税法(確定申告)では、1部分だけ現金主義を認め、ほとんどが、費用は発生主義、収益は実現主義を採用しています。
なお、1部分で有価証券の時価評価があるものの、基本的には、取得原価主義が採用されています。
取得原価主義とも重複するのですが、この収支額基準の利点は、取引当事者の合意に基づいて成立した金額によるため、数値の客観性が高い、また利益の検証性が高いということがあります。
さらに、発生主義や、実現主義が採用しても、投資の成果を表す利益、すなわち、投下資本の回収余剰としての分配可能利益が算定されます。
このため、現金主義をベースとした「収支額基準」(収支基準)が採用されるようになりました。
収支額基準を簡潔に説明します。
収支額基準とは、収益を収入額に基づき、費用を支出額に基づきそれぞれ測定する基準です。この場合の収入額・支出額は、当期の収入額・支出額のみならず、過去及び将来の収入額・支出額をも含みます。
収支とは、収入と支出の頭文字を接合させた単語です。額とは、会計公準3つの内の貨幣的評価を採用します。かつ、日本国内の「額」ですので円で評価します。
収入とは現金の入ってきた(入金)された額(円)です。支出とは現金の出ていった(出金)した額です。
したがって、ベースになるのは現金です。
現金主義と発生主義と実現主義。収支額基準を例示してみます。
現金主義と収支額基準が若干意味が異なるのは、現金主義が収支の時点、つまり、収支を認識した時間空間を意味しているのに対し、収支額基準はいくら入金して、いくら出金したかです。
発生主義も実現主義も基本的には、発生または実現という時間軸で、費用や収益を認識します。
上記の考え方に支えられて、現金主義あるいは現金ベースを依拠とした収支額基準による収支差額と、期間損益計算によって算定された期間利益は、最終的には計算を行うと等しくなります。
要するに、開業から解散まで、実際に残った現金の残(資本回収)と、期間利益の合計=儲け(利益)は必ず一致するという考え方です。
費用 | |||||
4月5日 | 支払運賃 | 100 | 未払金 | 100 | 発生主義 |
4月6日 | 未払金 | 100 | 現金 | 100 | 収支額基準 |
収益 | |||||
4月9日 | 売掛金 | 100 | 売上 | 100 | 実現主義 |
4月10日 | 現金 | 100 | 売掛金 | 100 | 収支額基準 |
例えば、費用ですが、4月5日は発生主義によって、支払運賃100を「認識」しています。そして翌日、現金100を支払っています。この4月6日の100を測定する基準が収支額基準(収支基準)です。
これを当期ベースで考えると、費用である支払運賃が100発生して、現金100が支出しています。
つまり、現金の支出額100で費用が測定されていることが分かります。
また、収益に関しては、4月9日に100の売上を売掛金で行なっています。これは「実現主義」で「認識」しています。翌日、4月10日に同売掛金を現金で回収したので、その回収額100を収支額基準(収支基準)により測定します。
これも費用と同じで、4月10日に実際に入金された現金100で測定し、4月9日の収益100は実現主義によって認識していることが分かります。
収支額基準は収支基準とも言います。簡潔に説明します。
収支額基準をベースにするならば、現金主義をベースにすれば良いということになりますが、貨幣経済から信用経済にシフトした「今」では、「現金主義」は途轍もなく使いづらいものなので、一般には使用されていません。
なお、収支額基準と収支基準は、全く、同じ意味です。
下記に、「収支基準」の論点を記載した書籍の1部分を記載します。第13章は、田村威文教授が記述しています。
「費用の認識基準は発生主義であり、現金支出の時点ではないが、費用の測定は現金支出の金額に基づくということになる。」
略
「収益の認識基準は実現主義であって、現金収入の時点ではないが、収益の測定は現金収入の金額に基づくということである。収益にかかる収入基準と費用にかかる支出基準をあわせて収支基準と呼ばれる。」(財務会計論 佐藤信彦ほか著 P344.p345 中央経済社)